理化学研究所は、1日に0.1nm程度しか視野が変化しない極低温超高真空走査型トンネル顕微鏡を開発し、超電導電子対状態から漏れだした電子の波だけを可視化する手法を確立し、超電導ギャップを電子の運動量の関数として測定することに成功した。この実験により、超電導状態に転移する温度が、電子対(超電導状態では電子が2個ずつ対になる)の結合の強さだけでなく、特定の方向に運動する電子の寄与で決まることを示した。高温超電導現象は、1986年にJ. G. ベノドルツとK. A. ミューラーがランタン系酸化物で発見して以来、金属が電気抵抗を消失する仕組みは解明されていない。
研究チームは新開発の走査トンネル顕微鏡で、転移温度28Kの超伝導物質Ca2-xNaxCuO2C12の表面を45×45nmの範囲で6万点以上の網目状の区間に仕切り、網目の各点で電子励起スペクトルを測定し、電子状態の分布図を20枚以上作成した。分布図の正負のエネルギーの比をとると、超電導ギャップ(電子対の安定化エネルギー)から漏れだした電子が作る干渉パターンが現れることを発見した。干渉パターンを解析することにより、電子波の進行方向がわかり、進行方向ごとに超電導ギャップの大きさを見積もることが可能になった。研究チームは見積もった超電導ギャップの大きさを転移温度が異なる物質と比較し、超電導ギャップが最大となる方向であるアンチノード方向の電子状態が転移温度の決定要因である可能性が強いと分析した。
今回の成果により超電導発現機構と直接関連する超電導ギャップ構造と転移温度の関連が世界で初めて理解可能となり、今後は磁場の印加や磁場による超電導の破壊時の電子干渉パターンの変化を調べ、超電導ギャップが消失する様子を明らかにして、超電導発現を実験的に解明していくという。この研究は英国の科学誌「Nature Physics」オンライン版(10月28日)に掲載された。
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理化学研究所、高温超電導状態の電子波の可視化に成功
[issued: 2007.11.07]
0.4Kの極低温で測定したCa2-xNaxCuO2C12の電子状態分布
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