Cover Story

組み込みOPCが、DUVレーザーでの
65/45nmマスク描画を可能にする

[2008年04月号]

パターニング前のCD補正をマスク描画データに適用し、マスク描画データにCD補正をかけ、組み込みの近接効果補正(OPC:Optical Proximity Correction)を適用することで、マスクのCDリニアリティや近接効果性能を向上することができる。これにより、DUVレーザーを使用して65nmや45nmプロセス向けのマスク描画が可能になる。


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Anders Österberg
スウェーデンMicronic Laser Systems社
www.mentor.comwww.micronic.se

Steffen Schulze
米Mentor Graphics 社
www.mentor.com

 通常、65nmや45nmなどのクリティカルもしくはサブクリティカルなフォトマスクは、電子ビームで描画して作製する。しかし、電子ビームでの描画時間は描画するデータ量に依存するため、相対的にマスクのコストも高価になる。光近接効果補正(OPC:Optical Proximity Correction)技術をレーザーマスク描画装置の描画データに適用することにより、65nmや45nmのサブクリティカルなマスク製造にDUVレーザーのマスク描画装置を適用することが可能になった。これにより、高いスループットが得られ、マスクセットの低コスト化が期待される。

DUVレーザーのマスク描画装置

図1 光学的近接効果の説明。形状のライン幅と近接形状へのギャップが与えられた形状端からの影響を受ける範囲(a)。フォトマスク上の影響により孤立形状と比較して近接したスペースを持つライン幅では違ってくる(b)

 OPCは、ウェーハプロセスでクリティカルな寸法管理を最適化し、デザイン形状と合致した転写イメージを作成するため、今では広く使われている。OPCソフトは、マスクと露光工程の特性を補正するためのマスク描画データを修正するのに使われるが、マスク描画装置やマスク開発プロセスを直接的に補正できるわけではない。スウェーデンMicronic Laser Systems社のDUVレーザーマスク描画装置「Sigma7500」は、ウェーハプロセスの露光装置と同様にコヒレントイメージを使ってマスク上にパターンを描画する。そのため、すでにウェーハプロセスで確立されているOPC技術によって、マスク描画装置の近接効果を修正することが可能である。

 Sigma7500は、繰り返し周波数2kHz、波長248nmのエキシマレーザーを搭載している。1)

 レーザーを照射する間に、100万個のマイクロミラーを有する空間光変調器(SLM: Spatial Light Modulator)は、マスクパターンの一部の領域がプログラミングされ、開口数(NA)0.82の投影光学系によってマスク上にパターンを縮小描画する。マスクを保持しているステージは常に移動するが、レーザー照射の間隔が短時間(最長でも20ナノ秒)のため、SLMイメージは所定の位置に固定される。複数のオフセット露光パスは、誤差を平均化することで最終パターンの精度を上げている。通常、厳しいマスク要求に対しては4パスが使用される。SLMベースの描画方式とFPGA(Field-Programmable Gate Array)によるリアルタイムのデータ転送方法により、パターンの複雑性やOPCデータはスループットに影響しない。一般的に、4パスモードでのマスク描画の時間は3時間ほどを要する。

 短波長、高NAと部分的な可干渉イメージングを重ね合わせることによって、解像度とリニアリティはKrF露光装置と同等の特性を示す。イメージのコントラストは、SLMのプログラミングによりハーフトーン型位相シフトマスク(Attenuated PSM)に類似した方法で高められる。パターンデータは描画時のラスタデータに変換され、リアルタイムな修正を容易にする。ここで述べられているマスク描画装置は、バイナリーマスク、ハーフトーン型PSMの第1レベルのパターニング、例えばハーフトーン型PSMのような先端マスクの第2レベルのパターニングらを含む各種マスクの描画に対応する。2)~4)

 光学的近接効果は、近接した形状の距離と同様に寸法にも依存し、描画したマスク形状の寸法にも影響を及ぼす。露光装置で4倍に縮小されるためマスク上の200nm相当のラインとスペースはウェーハ上で50nmに転写される(図1)。効果の範囲はDUVマスク描画装置で300nmと小さいが、形状のライン幅と近接した形状のギャップ(隙間)をOPCは考慮にいれなければならない。修正前のフォトマスクは、孤立パターンと近接した形状の間でライン幅は異なってきている。簡略化のために1:1のネスト形状の特別な例を示す。


マスク描画装置の修正方法

 このマスク描画装置はスキャンタイプやステッパーなどの露光装置と同様な機能を持つため、マスクがSLMで置き換えられるような場合を除いて、同様のモデルで記述することができ、従来のリソグラフィ技術で開発された応用技術を適用することができる。しかしながら、マスク描画装置へのOPCの適用については、ルールベースもしくはモデルベースのどちらの修正方法を使うかが課題である。修正方法の選択はいくつかの基準によって導かれる。

■マスク寸法で180~250nm内のパターンに対しての精度要求(ウェーハ寸法の4倍)

■コンピュータの計算量による制約

■直接的な測定を基にした修正表もしくはマスク描画装置の光学モデルでの修正表を作成できる可能性

 ウェーハ上65nmに対して、マスクプロセスの修正が4倍マスク寸法で約250nmのスペースであることを見出した。250nmノードでは単純なルールベースの修正がシステマティックな近接効果を除去するのに使用でき、ウェーハ上の要求CD制御を達成できる。250nmの形状に対して修正前のピッチの近接効果は約10~15nm程度である。これはルールベースの修正で十分な2~4の修正ビン(bin)で対応できる。ルールベースのOPCは相対的に簡単でDRC(デサインルールチェック)プラットホームで実行できる。その結果65nmと45nmのノンクリティカルマスクに対してルールベースの修正方法が選択されている。


独立型OPC vs. 搭載型OPC
 マスク修正方法は、マスクメーカーの責任下で最終マスクデータの作成に先立って独立した工程で実行する方法と、マスク描画装置に搭載されたマスク修正を実行する方法の2つの方法が導入されている。

 独立型の修正モジュールは、マスク描画装置にデータを転送する前に修正が行われる。この方法はハードウェアの選択と変更に自由度をもたらす。そしてスループットの要求に合致する。しかしデータの保管、処理、転送にコスト増加をもたらす。さらにローカルジョブの処理と待機用のシステムに新規方法を組み込む必要が出てくる。マスクメーカーのエンジニアリングチームが修正パラメータの定義と整備を行い、これはマスクの受注においてサインオフとデータの有効化を保持するためのデータフロー変更の決定が含まれる。独立型方法での製造エラーのリスクを考慮しなければならない。

 マスク描画装置に修正モジュールを搭載もしくは「組み込み」する方式は、セットアップ、モニタリング、メンテナンス、描画などの製造フローの中に組み込まれる。入力データ(マスク描画データは装置特有のフォーマットでばらばらにされる)が変えられないため、ユーザーにプラグ&プレイのソリューションを提供する。ユーザーは、標準的方法で装置を動かすことでCD性能を改善したマスクを作製することができる。

組み込みOPCの機能

 一般的にルールベースのOPCに対して、図形の解析とテーブルベースの修正に標準DRCコマンドが使用される。このテーブルベースの修正方法は、ユーザーが管理するテーブルを使うことも可能である。結果には何種類かの修正が含まれる。

■CDリニアリティと近接効果を最適化するため幅とスペース依存のバイアス値

■パターンの忠実性を改善するためのセリフとハンマーヘッドの追加

■長距離CDの変動を低減するための密度ベースのバイアス値

 リニアリティイコライザと言われている組み込みOPCの応用では、米Mentor Graphics社物理検証プラットホーム「Calibre」のプロセスエンジンを使用して、CDのリニアリティと近接効果の修正が行われる。ユーザーは書式の中で別々のビンと移動値一式を規定する。



 例として、このサンプルルールは、幅>0.1μmと=0.13μmを持ち、隣の正反対の形状に対して>0.1μmで≤0.18μmのスペースを持ち、0.01μm移動するライン(多角形)に属するエッジが規定されている。ユーザーは、描画したテストパターンを測定すること、もしくはマスク描画装置の装置メーカーからのシステム記述モデルからテーブル値を決定する。

 図2(a)は光学的近接の影響を受ける2つの長方形の特別なケースに対するエッジ移動を説明している。各形状の終端は正反対の形状内に新しい頭頂を発生させ、そして修正ルールは結果的に終端部分に適用される。図2(b)は一般的なケースを示す。長方形の形状の反対側の頭頂は、エッジを判断する類似した頭頂として作られる。データが下流のプロセスで過度に複雑にならないように、追加制御として微小エッジの作成を抑えるスムージングの機能が提供されている。



図2 テーブルベースのOPCでのエッジ移動の説明。形状1の幅と形状2へのギャップ、そして近接した反対の形状(a)を基に、エッジe1はルールによって移動する。任意の図形に対して各エッジ部分は関連する幅とギャップによって判断と移動が行われる。反対の頭頂は関与する(b)形状が模写される


ハードウェアの要求
 最終目標は、マスクのスループットに影響を与えないでマスク描画装置の修正を行うことである。OPCの作業時間は平均マスク描画時間よりも長くなってはならない。これは描画作業の背後にある課題である。大量な図形総数を持ったフラット入力データと、処理しなければならない大量のルールが、スループットの問題を倍増させる。大量のフラット入力データを処理する上での課題は、修正のための高度なデータ処理ができることであり、大規模な並列ハードウェアの適用によって対処することができる。5)

 通常の組み込み式OPCソフトウェアの実行プラットホームは、x86アーキテクチャを持ちLinux環境で動作する、商業ベースの一般的なPCハードウェアで構成されている。ブレードサーバーに搭載される。ローカルデータの保管は拡張型RAID-5で構成されていて、ディスクは通常1.8テラバイトの容量をもつ。マスターとブレードシャーシ間の配線構成はギガビットイーサネットで構成されている。ブレードシャーシ内部では、各ブレードへの単一ギガビットイーサネットが、マスターを最上位とした階層構造で構成されている。ブレードサーバーはマルチコアCPUを搭載している。65nmマスク設計に対する通常の機器構成は2.33Ghzで動作する200コアCPUと1コア当たり2GBのRAMを必要とする。

ルールセットの補正
 修正テーブルを作成するための良い方法は、描画装置に用意されたモデルを使用することである。しかしプレートの測定のみをもとに手動の修正テーブルを作成することも可能である。各々の場合、ライン幅とギャップを関数としたCD平均値と公称値(MTN)を記述したマトリックス書式にCDデータを組み込みOPCに対して入力する。ギャップは2つの隣り合ったラインの反対のエッジ間の距離である。この目的のため特別に設計した近接効果マトリックス発生器(PMG)の関数のなかでモデリングは実行される。すべての目標図形に対するライン幅とギャップを関数としてCDのMTNをマップしたライン幅/ギャップのマトリックスをPMGが作成する。

 プレート上での測定のみを基にして作成された修正テーブルと比較して、PMGは量産フローに互換性のあるより迅速な解決策を提供する。描画装置は時間経過により多少変化するため(例として、公称ドーズの変化がある)に、これは必要とされる。描画装置の動きをモデル化したPMGは、システムパラメータとプレート上の測定データで規定された入力データを必要とする。修正マップマネージャはライン幅/ギャップ参照を解釈し、組み込みOPCソフトウェア実行に使うDRCファイルを作成するためのコマンドを使って、対応するルールコマンドを発生さす。

実験結果

図3 クリアー(露光)とダーク(非露光)形状でのテストパターンに対して組み込みOPCの適用を実験的に検証した。光学的近接効果は顕著に低減し、CDリニアリティのカーブはテストした最低形状寸法140nmまで平坦性を示した

 マスク描画装置の操作を改善するため組み込みOPCの能力に対して、修正の適用ありなしでプレートに描画して比較評価を行った。プログラムされたライン幅(CD)を持つ校正パターンを用い、実験の負荷サイクルは、最初の描画とシステム記述のモデルを基にしたルールを含むルールテーブルの計算であった。パターンは組み込みOPCで修正した後再度描画され結果が比較された。6)

 修正なしの性能(図1)とPMG発生によるライン幅/ギャップマトリックスで組み込みOPCを適用した比較をする。図3に校正用パターン内のクリアーとダーク形状に対する、測定したCDのリニアリティを示す。1:1のネスト形状のリニアリティはこのパターンに対する近接効果を本質的に除去している点で改善がみられる。CDのばらつきは200nmの形状寸法で4nm以下に低減している。これは今回評価したマスク描画装置で規定された220nmの基本形状寸法より小さい。修正しない場合の45nm CD範囲に比較して、CDの範囲はパターン設計(140nm)内の最少形状寸法で9nmまで低減した。

 組み込みOPCのその他の利点としてマスク描画装置の実用解像度が拡大したことがあげられる。非修正の形状に対して見られるリニアリティカーブの下端での減退は、自動バイアスでの形状においては観察されない。図4に、中心に位置する260nm形状のテストパターンとそれにまたがる両側の2個の120nm補助形状のSEMイメージを示す。非修正のパターンでは、中心の形状は幾分小さく描画されていて、補助形状はさらに悪化している。組み込みOPCにおいては、すべての形状が正常に寸法通り描画されている。



図4 フォトマスク上のダーク補助形状の実用解像度は、組み込みOPCの使用によって120nm以下まで拡張した


まとめ
 Sigma7500のデータ処理フローの中に組み込まれているマスクデータ準備ソフトウェアとOPCツールCalibreで構成され、パターニング前CD修正をマスクパターンデータに適用することにより、フォトマスク上のCDリニアリティと近接効果の性能を向上することができた。テストパターンでの評価で20nm以上から5nm以下までCDリニアリティと近接効果の範囲が、実験結果で改善したこと示している。修正テーブル/ルールに対する基本である光学装置のモデルを使用することで、プレート上の測定を基にしたテーブル/ルールと同等の性能を提供することができる。そして組み込みOPCを応用することで容易にトラッキング可能なシステムを実現する。単一のキャビネットからなるブレードコンピュータを使用して、マスク描画装置のスループットを低減することなしに、組み込みOPCでの修正を行うことができる。これは以前の電子ビーム装置でしか描画できなかった65nmや45nmのサブクリティカルなフォトマスクに対して、光学的マスク描画装置が使用できることを意味する。

参考文献
1.H. Sjöberg et al., “Sigma7500: An Improved DUV Laser Pattern Generator Addressing Sub-100 nm Photomask Accuracy and Productivity Requirements,”Proc. SPIE, 2006, Vol. 6283.

2.T. Öström, A. Beyerl, H. Sjöberg, T. Newman and P. Högfeldt, “Second Level Exposure for Advanced Phase Shift Mask Applications Using the SLM-Based Sigma7300 DUV Mask Writer,”Proc. SPIE, 2005, Vol. 5835, p. 155.

3.M. Chandramouli et al., “Second Level Exposure for Phase Shift Mask Applications Using an SLM-Based DUV Mask Writer,” Proc. SPIE, 2005, Vol. 5853, p. 398.

4.B. Olshausen, M. Chandramouli, D. Wall, B. Auches and D. Cole, “Production Performance of a Sigma7300 DUV Mask Writer,”Proc. SPIE, 2005, Vol. 5992.

5.W. Zhang, E. Sahouria and S. Schulze, “Distributed Computing in Mask Data Preparation for 45-nm Node and Below,” Proc. SPIE, 2007, Vol. 6349.

6.A. Österberg et al., “Embedded Optical Proximity Correction for the Sigma7500 DUV Mask Writer,”Photomask Japan, 2007.

Anders Österbergは、スウェーデンMicronic Laser Systems社のエンジニアリングプログラムマネージャ。スェーデンRoyal Institute Technology大学で電子エンジニアリングのマスターの学位を取得。Micronicに7年勤務。現在はマスクパターニングにおけるデータパス技術プロジェクトを担当。

Steffen Schulzeは、米Mentor Graphics社Calibre応用におけたマーケティングディレクタである。ロシア、モスクワの化学技術Lomonossov Institute大で材料科学のマスター学位を取得。ドイツ、ベルリン大学で電子技術のPh.D.を取得。そしてオレゴン大でMBAを取得。Mentor Graphics社に6年勤務している。現在は半導体製造のテープアウト後のデータ準備フローの改善プロジェクトを担当。



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