Industry Perspective

韓国vs.日本という見方では読み誤るグローバル戦略

[2008年06月号]

By 服部 毅
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 韓国最大財閥Samsung(三星)グループの経営権の世襲に絡む不正資金疑惑を巡り、特別検察チームは4月17日に李健熙(イ・ゴンヒ)会長はじめ役員10名を背任や脱税などの罪で在宅起訴した。検察は逮捕者を出さなかった理由として、「Samsungの企業経営が支障をきたすと韓国経済に悪影響が避けられないから」と手心を加えたことを公言してはばからない。まさにSamsung≒韓国経済ということだろう。李会長自らが引責辞任して一件落着したが、その直後から、Samsung社内で先送りされてきた重要事案が次々決済され、堰を切ったように超大型投資の発表が相次いだ。

半導体・液晶パネルに過去最大の投資

広大なSamsung Electronicsの湯井(タンジョン)工場全景。S-LCDのG7・G8ラインとSamsung Electronics自身のラインが共存している。新たにS-LCDのG8増設ライン(“8-2”)の建設が始まった(矢印)。手前の建物は事務棟

 Samsungは2008年にグループ全体で27兆8000億ウォン(約2兆9000億円)を投資する計画を4月28日に明らかにした。前年比24%増で、過去最高額だ。半導体や液晶パネルなどの製造設備関連には総額で19兆1000億ウォン(約2兆円)を投資するという。これに先立ち25日には、グループ中核のSamsung Electronicsが過去最大の11兆ウォン(約1兆1500億円)以上の設備投資を実施すると発表した。設備投資の内訳は、半導体メモリーが7兆ウォン(7000億円余)、液晶パネルが3兆7000億ウォン(3900億円)など。 同社はソニーと共同で約2000億円を追加投資し、第8世代のアモルファスTFT液晶パネルの生産量を倍増することも同時に発表した。

ソニーと液晶パネルの合弁事業を拡大
 Samsung Electronicsとソニーの合弁液晶パネル製造会社、S-LCDは、ソウルの南約100キロメートル、田園風景の広がる忠清南道(チュンチョンナムド)牙山市(アサンシ)湯井面(タンジョンミョン)の丘の上にある。Samsung Electronicsの 大型液晶パネル専用工場である湯井工場のなかに、第7世代(G7)工場の右側の 棟(7-1)と第8世代(G8)工場の右側の棟(8-1)の2ラインを間借りしている(写真)。Samsung Corningのガラス基板工場や従業員用の高層マンション群が 隣接している。この工場の左端で、Samsungはソニーとの増資契約締結を待たず に、213億円を投資して、G8増設(8-2)ラインのための基礎工事を始めていた。 2005年4月に稼動を開始した7-1ラインでは、月産10万枚(1870×2200mm)、2007年 8月に稼動開始した8-1ラインでは5万枚 (2200×2500mm)とSamsung独自投資により6万枚規模で生産中だが、これに加えて来春稼動予定の8-2ラインでは6万枚の量産が予定されている。

液晶テレビの勝負はグローバルな舞台で
 ソニーは今年の液晶テレビ販売台数を昨年度から倍増させ、さらに2010年度の販売目標を3000万台に設定して世界首位をめざす。同社は自前の液晶パネル工場を持たずにSamsungと組んで調達してきたが、需給がひっ迫しパネルの安定確保が難しくなった。このため、Samsungや台湾勢からの供給だけでは足りず、安定確保のためシャープからも供給を受けることを決めた。ソニーにとってSamsungは液晶パネルのパートナーであるとともに、液晶テレビでは手ごわいライバルだ。一部に、韓国(Samsung、LG)vs.日本(シャープ、ソニー)という見方があるが、そういう偏狭な見方をすると情勢を読み誤ることになろう。亀山のシャープはともかく、ソニーやSamsungはいまや世界規模の企業だ。部品調達も製品販売も、狭い国内ではなくグローバルな舞台で勝負できなければ、生き残れないだろう。



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