Features

半導体メーカー設備投資動向:
2008年は先細りか

[2008年03月号]

300mmウェーハを月産20万枚生産可能な90~100億ドル規模の超大型量産工場“モンスターファブ”の登場で、“メガファブ”の影も間もなく薄らぐことになるだろう。フラッシュメモリーを主とした半導体メモリーの需要増加が見込まれるため、2008年の設備投資の冷え込みでこの傾向が弱まることはない。


この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る
Christian Gregor Dieseldorff
SEMI
www.semi.org/fabs


 半導体メモリーの価格、特にDRAMとフラッシュメモリーの価格は2007年初頭から衝撃的な下落に悩まされている。この下落は2007年第4四半期も続き、現物および約定価格とも新安値にまで落ちた。これは消費者にとっては喜ばしいことで、また当然、メモリー需要は良好に見える。メモリーの需要予測はうなぎ上りの数値を示しており、巨大成長市場の幕開けのようである。2007年5月の時点で、NAND型フラッシュメモリーの需要は、2006年の7370億Mバイトから2011年には33兆5000億Mバイトに成長するという予測が示されていた。これは年複利成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)114%ということである。

 低価格によっても需要を加速するなかで、追随できない企業も出てきている。例えば、2007年9月には東芝がNAND型フラッシュメモリーの需要に応えることができず、2007年12月まで品切れ状態だったと伝えられている。同社はNAND型フラッシュメモリーの需要はビット成長率で見て2008年は120%、2009年は115%と予測している。販売価格の低さは喜ばしくないが、同社は急上昇する需要を満たすために大規模な生産設備の立ち上げを計画している。さらに韓国でもDRAMからNAND型フラッシュメモリーへ生産設備のシフトを計画している半導体メーカーが複数ある。

 これに加えて“メガファブ”と呼ばれる大型の量産工場も市場を刺激している。なかにはモンスターレベルの規模に達するさらに大型の量産工場もある。既に下がり気味の価格状況のなかで市場シェアを確保するために、平均小売価格(ASP:Average Selling Price)の下落がさらに加速することを危惧する業界関係者も多い。供給過剰への懸念が表面化している。例えば、米iSuppli社は「過剰供給がメモリー市場を泥沼に追いやっている」と先ごろ報告している。

市場が大損失をもたらす
 市場が大損失をもたらし始めたことに対して、企業はさまざまな対応を取っている。予測需要を満たそうと努力する企業もあれば、設備投資の削減を迫られる企業もある。しかし事業拡大を計画している企業はほんのわずかだ。

 設備投資を削減したり、生産性向上やコスト削減を実現するための改革に力を入れている企業もある一方で、大規模なリストラを発表している企業もある。つい最近、韓国Samsung Electronics社は1630人、米Conexant社は従業員の20%、米Micron Technology社は約10%のレイオフを行なった。

 多くの企業は2008年の設備投資の大幅削減を発表している。例えば、台湾ProMOS社は18億ドルから8億ドルに設備投資額を削減するようだ。台湾のファウンドリUMC社、台湾TSMC社は大幅削減を表明している。また、独Qimonda社は2007年度の計画よりも設備投資が下回ったことを認め、2008年度の設備投資は2007年度をさらに下回る見込みであると言及した。

 しかし、すべての企業が設備投資を削減しようとしているわけではない。前にも触れたように、東芝は急増する需要に合わせて巨大設備の立ち上げを計画している。Samsungは伝統的に他社が支出の削減を強いられる下降局面で設備投資を増加させてきた。同社は2007年当初に発表した米Austinの工場を含む設備投資計画を69億ドルから一気に83億5000万ドルに増額した。同社よりも規模は小さいが、台湾Winbond社も設備投資額を2007年の2億4500万ドルから2008年には5億8700万ドルに倍増する。

量産工場の建設

図1 2008年の量産工場建設への設備投資額を2007年よりも低く計画する企業が多い
(出典:Fab Capacity Report Interim、2007年11月)

図2 量産工場への2008年の製造装置導入は2007年よりも大幅に鈍化するだろう
(出典:Fab Capacity Report Interim、2007年11月)

 全般的な設備投資の削減は量産工場の建設プロジェクトや半導体製造装置へも直接影響を及ぼしている。

 量産工場建設への設備投資は将来稼動する能力の一つの指針になる。これらの投資の成果は普通、その量産工場の生産が立ち上がり始める1~2年後に現れる。

 2007年に前年比8%で伸びた工場建設への設備投資は、2008年には前年比1桁減になるだろう(図1)。半導体製造装置への設備投資はさらに大きく減少する可能性がある。すなわち2007年に前年比約8~10%伸びた設備投資額が、2008年には前年比−7から−10%減少する(図2)。

 日本、台湾、韓国が2007年、2008年ともに製造装置への設備投資額を牛耳る地域となる。

 製造装置への設備投資額は殆どの地域で減少傾向にあるが、いくつかの地域で増加する模様だ。2007年には台湾と中国が新規あるいは既存の量産工場への製造装置導入で前年比最も高い成長を見せた(それぞれ約50%と約40%)。2008年には東南アジアが製造装置への設備投資で最も高い約30%の伸びを示すと見られる。続いて欧州および中東(イスラエルを含む)が約16%伸びるだろう。


設備投資の変化が生産能力に及ぼす影響



表 生産能力の地域別向上率(2000 年~ 2007 年)

 2007年の終わりに発表された設備投資の削減は、すぐに生産能力(前工程の生産能力)に影響を及ぼすわけではないが、2008年後半には影響が出るかもしれない。

 約24の量産工場の建設が2008年に始まる。それらの生産能力は最高で200mmウェーハ換算、月産23万5000枚となる。2009年にはこれらの量産工場での生産がいくつか立ち上がり始めるだろう。

 世界規模では、2007年には生産能力がほぼ20%向上したが、2008年は11%増に留まるだろう。設備導入済みの量産工場の全生産能力のうち、メモリーに特化した量産工場は2007年の約38%から2008年には41%以上にまで増すだろう。日本は2007年、2008年とも設備導入済みの生産能力で主導的位置を占め、各年、200mmウェーハ換算で月産350万枚、360万枚を生産可能である。台湾と韓国がそれに続き、2007年にはそれぞれ月産約250万枚、260万枚、2008年には月産280万枚以上、270万枚である。米国は第4番目の位置にあり、2007年の設置済み生産能力が月産230万枚以上、2008年には月産260万枚以上と予測される。

 図3図4は、2000年および2007年の地域別の生産能力シェアを示している。2000年には日本が全生産能力の約1/3を占めていた。しかしその後の7年間は日本の生産能力向上が他の地域に比べて緩やかだったため、現在は全生産能力の約1/4に留まっている。2000年以来、韓国の生産能力は約330%向上し、設備導入済みの生産能力では現在第2位を占める。それに続いて台湾が240%の成長を見せ、現在は全世界の18%のシェアを占める。中国の生産能力は現時点ではまだ相対的に低いが、過去7年間の伸びでは最高の800%以上の値である()。

シンガポールが300mm ウェーハでは力を見せつける
 米Strategic Marketing Associates社のGeorge Burns氏が既に指摘したように、シンガポールの生産能力が驚くべき成長を見せている。2000年の生産能力から310%向上した。この成長は主に300mmウェーハ工場によるところが大きい。  シンガポールでは米Micron Technology社傘下のTech Semicon-ductor社やIM Flash社(米Intel社と米Micron社の合弁会社)、Chartered Semiconductor Manufacturing社、Qimondaがこの大きな成長に寄与している。シンガポールのような小さな国にとって、国が大々的な奨励策を採る他の地域との競争を考えると、これは目覚しい成長である。  欧州および中東地域では、イスラエルでのIntelと、ドイツでの米AMD社が2008年に行なう製造装置への設備投資がその成長の大部分を占める。この地域の国々は、これらの企業に非常に大きなインセンティブを与えてサポートしている。

ロシアが眠りから覚め、 ブラジルも浮上
 新たに注目すべき2つの地域が浮上している。これまでほとんど耳にしなかった地域だ。ロシアは最近200mmウェーハ量産工場について発表した。モスクワのJSC Micron社がスイスのSTMicroelectronics社との共同開発を進め、2008年には200mmウェーハの量産工場の操業を開始するもようだ。また、モスクワのAngstrem社はZelenogradにある既存の建屋にドレスデンにあるAMD社の量産工場設備を導入して改装中である。この工場は2009年に生産を開始すると思われる。ロシアはこの他にもTronic JV、マレーシアKedah Group、独Sitronic社と共同で初めての300mmウェーハ工場の試案を発表した。これらの工場の稼動はまだ先の話だが、もしロシア政府主導の奨励策が継続してこの産業をサポートし続ければ2010年か2011年までに300mmウェーハ工場がお目見えするかもしれない。  南北アメリカ大陸ではブラジルが半導体分野に浮上してきた。Ceitec社がブラジルで初めての150mmウェーハ工場の建設を完了した。1億3000万ドルをかけたこの工場は、2008年半ばに小規模な稼動を始めるだろう。Companhia Brasileira de Semiconductors社もMinas Geraisに計画されている200mmウェーハ工場の資金調達をしている。

市場の状況に立ち向かう ファウンドリ
 TSMC、UMC、中国SMIC社、Charteredの半導体ファウンドリ上位4社は、設備投資額を削減したとしても稼働率を保持または向上させると思われる。TSMC、UMC、Charteredの3社は2008年、設備投資額を少なくとも10%削減する。一方、SMICの量産工場への投資は、ビジネスパートナーや資金調達企業のプランに依存する。  UMCは2008年の設備投資額を全体としてかなり削減すると発表した。しかし、古いプロセス技術を新しいプロセス技術へ変換することに焦点を絞って、重要で資本集約的な特定の設備の生産性を向上し、生産能力を拡大するという。同社が現在建設中の量産工場Fab12Bのプロジェクトは減速し、設備導入の開始は2008年末までに行なうと見られる。TSMCは2008年、生産能力増強のペースを少し落とすかもしれない。これら2社はFab14 Phase2の立ち上げを完了し、Fab14 Phase3の立ち上げを開始する予定である。それぞれ最大で月産4万〜4万5000枚のウェーハ生産能力を持つことになるだろう。SMICとCharteredは市場の要求を待って、当面の設備投資に関して減量経営を行なうと発表した。  2008年、ファウンドリとしての生産能力をある程度持つIDM(Integrated Device Manufacture、垂直統合型企業)を含め9つのファウンドリが稼動を開始し、6つのメモリー量産工場の生産が始まる。これらのファウンドリの最大生産能力は200mmウェーハ換算で月産40万枚、メモリー量産工場の生産能力は月産70万枚である。9つのファウンドリのうち6つは中国にある。

メモリー量産工場が市場を活気づける
 設備投資の削減にもかかわらず、Samsung、韓国Hynix Semiconductor社などのメモリーメーカーが市場を活気づけ続けている。フラッシュアライアンスと台湾Rexchip Electronics社(台湾Powerchip Semiconductor社とエルピーダメモリのDRAM合弁会社)が市場にぐんぐん進出し続ける。  フラッシュアライアンスは同社の大規模量産工場、すなわち“モンスターファブ”であるFab4の立ち上げを加速するもようだ。この量産工場は世界最大で、最大300mmのウェーハを月産21万枚製造する能力がある。ことによると来年半ばまでに、さらにFab5(これも月産21万枚)の建設を開始しそうだ。Rexchipは月産7万枚の能力での300mmウェーハ生産を開始した。これは計画された4つの量産工場のうちの最初の工場にすぎない。第2の量産工場は2007年7月に建設を開始しており、2008年の後半には操業を開始すると見られる。  Qimondaはシンガポールに月産6万枚の300mmウェーハの量産工場を2008年初めから建設し始めている。HynixはSTMicroelectronicsと共同で中国の無錫に月産8万枚の300mmウェーハDRAM/フラッシュメモリー量産工場を立ち上げており、2007年にフル稼働に入っている。Hynixもまた韓国イチョン(利川)でFab M10を月産11万枚の300mmウェーハ工場に改装するもようだ。

牙を剥く“モンスターファブ”

図5 2008年には量産工場の生産能力が11%向上する見込みである
(出典:Fab Capacity Report Interim、2007年11月)

図6 平均的工場規模の成長
(出典:Fab Capacity Report Interim、2007年11月)

 量産工場の規模がどんどん大きくなってきており、半導体設備が導入されると、計画されている半数以下の300mmウェーハ量産工場(73工場)だけで200mmウェーハ量産工場すべて(182工場)を合計した生産能力を上回ることになる。2008年には300mmウェーハ工場の生産能力が200mmウェーハ工場の生産能力を上回る見込みだ(<b>図5</b>)。  例えばSamsungとHynixは、両社の300mmウェーハのメモリー量産工場の多くで月産8万〜11万枚の生産能力を立ち上げた(300mmウェーハ換算)。フラッシュアライアンスは月産20万枚以上(200mmウェーハ換算では月産45万枚)の生産能力を持つこれまでで最大の量産工場を建設している。これらの工場のコストはどちらも約90~100億ドルと見られ、生産能力もコストも莫大な値である。  300mmウェーハ工場の生産の立ち上げは非常に早い。<b>図6</b>は全生産高を工場数で割った生産能力比を200mmウェーハ換算で示している。300mmウェーハは立ち上げと同時に生産能力が増加し、生産能力が増加している。  最初の300mmウェーハ工場はドイツのドレスデンのSC300で、独Infineon Technologies社と米Motorola社のジョイントベンチャーが2000年に立ち上げた。2001年にはさらに4つの工場が立ち上がった。すなわちIntelのD1C、ルネサステクノロジの那珂2-1F、UMCのFab12A、TSMCのFab12 Phase1である。  しばらくの間、300mmウェーハ工場は“メガファブ”と呼ばれ、その多くはメモリーチップ生産のために建てられた。それらが一層大きくなるにつれ、過去のメガファブは“モンスターファブ”によって陰が薄くなってくる。例えば、従来の月産2万~3万枚(300mmウェーハ換算)の300mm工場のコストは30~40億ドルだった。この“良き時代”は終わり、半導体産業はそのコストが90億~100億ドルに達する月産20万枚以上(300mm換算)という大量生産時代に入った。メモリー(主にフラッシュメモリー)の需要の増加が見込まれるため、この傾向は2008年の設備投資額が鈍化しても変わらないだろう。  これで市場競争は非常に激しくなる。最初に来るものが勝つ。もしメガファブの新しい世代であるモンスターファブが過剰供給に陥ると、半導体チップのASPの下落がさらに加速することも考えられる。  我々の見方では、2008年の量産工場建設プロジェクトおよび半導体製造設備導入への投資額は鈍化すると見ているが、これは変わる可能性もある。より成熟した半導体業界が市場の改善のサインを見逃さずに以前よりも迅速な対応を見せるかもしれない。


<b>Chris Gregor Dieseldorff</b>は、SEMIのシニアアナリスト兼マーケットリサーチ担当ディレクターである。半導体業界に21年以上携わり、さらに製造およびR&Dの経験を持つ。2002年に米Strategic Marketing Associates社で半導体量産工場担当のアナリストになった。2007年1月から現職。

この記事を :  印刷する プリントする ブックマーク  はてなブックマークに登録 この記事をクリップ! Buzzurlにブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 メールで送る メールで送る

SI Japan RESOURCE CENTER

アドバンスドエナジージャパン株式会社
金属材料のマグネトロンスパッタリングにおけるアーク抑制
JPN-ArcSputmetal-270-01.pdf
資料一覧を見る
この資料をダウンロード

EVENTS